超小型ドローンプロジェクト「Zano」の頓挫
クラウドファンティングサービスを提供しているKickStarterで、4億円以上の出資を獲得した超小型ドローンプロジェクト「Zano」が、2015年11月に頓挫しました。
Kickstarterは、フリーランス記者のMark Harrisさんに、Zanoプロジェクトが頓挫するまでの経緯をまとめて、記事にして欲しいと依頼しました。その記事がこちら。
実は私、このプロジェクトのBacker(出資者)でした。2万円出資して、見返りに超小型ドローンを1台もらう予定でしたが、頓挫により、手元には何も残らないことが確定しました。ああ、悲しい。
プロジェクトの失敗が投資につくまとう当然のリスクであることは、Backerになる前から理解していました。でも、頓挫を知った時はとてもショックでした。なぜそう感じたのか?そこを深く考えた時、少し見えてきたものがあります。
「寄付」と「購入」
クラウドファンディングに出資するBackerには、「寄付」と「購入」の2つのマインドが混在しています。「寄付」は、直接的な見返りを求めないでお金を渡す行為。対して、「購入」は見返りを貰う前提でお金を渡す行為です。
今回の私は、「寄付」ではなく「購入」のつもりでした。もしこれが、応援したいという気持ちからの「寄付」であれば、特に落ち込むこともなかったと思います。
では、なぜ「購入」のつもりになったのか?表面的な見方をすれば、「2万円投資する見返りに、Zano本体を1台送ります」というプランを選択したからと言えますが、失敗する可能性がある事は理解していたので、そのプランをそのまま鵜呑みにした訳ではありません。
「購入」しようと思った理由
決め手となったのは、デモ動画でした。とても滑らかにスイスイと自在に動く超小型ドローンを見て、「お金さえあれば、すぐにでも量産できるんだ!」と勝手に思い込んでしまったのです。
一般的な製品開発プロセスは、「商品企画」→「試作」→「量産準備」→「量産」です。消化できてないプロセスが多い程、失敗リスクが大きいです。まだ「試作」中のプロジェクトよりも、後は「量産」を残すのみというプロジェクトの方が、失敗リスクが少ないということです。私はデモ動画を見て、Zanoプロジェクトは「量産」を残すのみなのだ、と勘違いしてしまったため、「購入」同然だと思ったわけです。
残念な現実
ですが、Markさんの記事によると、実態は違ったようです。試作機は、基本的な飛行性能の品質が不十分で、まだ「試作」が終わっていない状況。「量産」にかけるべき出資金を、試作開発で使い込んでしまったようです。(他の用途でも使っているようですが、ここでは割愛)
冷静に考えれば、デモは何回でも撮り直しできるし、”編集”という魔法も使えるから、デモ動画では試作機の本当の品質は評価できないですよね。
もし、投資する前に私がそこを理解できていれば、「寄付」のつもりでもっと少額のプランを選んでいたと思います。2万円という安くない金額をすんなり出せたのは、「購入」するマインドだったからです。
Backerには批判的な姿勢が必要
トヨタ生産方式や失敗学でしきりに言われている、「現地・現物・現人」の大切さを改めて感じました。そこまでしないと、本当の事実は掴めないのだと。
とはいえ、クラウドファンディングの世界では、プロジェクトオーナーと面識もなく、直接会話できる関係にもないのが普通なので、それが難しい。できることといえば、批判的な目でデモや資料に目を通し、疑わしい点があれば、別の情報ルートから裏を取ることくらいでしょうか。クラウドファンディングの出資者には、そういう姿勢が必要なのだろうと思います。
「寄付」のつもりなら、プロジェクトオーナーの言い分を鵜吞みにしても良いと思います。Facebookでいう「いいね!」みたいな感じで、気軽に。
おわりに
今回は、私にとって初めてのクラウドファンディングでした。手元には何も残りませんでしたが、いい教訓は得られたので2万円は安い授業料だったと思います。同じ開発者として、Zanoのプロジェクトオーナーには同情しています。頓挫するまでの間、大変な苦労をしたことだろうと思います。再起に期待。