AppleのHealth Kitへの違和感が解消


第7回講演会「情報工学が切り開く医療分野」に参加してきました。
医療の最前線で研究に従事している篠原先生から、情報工学のポテンシャルについて貴重な話をたくさん聞くことができ、とても有意義でした。

その中で、iOS8以降でリリースされているHealthKitの話題もあり、私が今まで持っていたHealthKitに対する違和感をきれいに解消してくれました。

なぜAppleが?

初めてAppleがヘルスケア機能(HealthKit)をリリースしたとき、私は、医療機器メーカーでもないのに、なぜAppleがこの分野に?という違和感を持っていました。Apple Watchの付加価値を少しでも上げる為に、半ば強引に参入したのかな…なんてことを勝手に想像していました。しかし、そこにはもっと大きな意味が含まれていたようです。

医療分野における機械学習の限界

例えば、マンモグラフィーや超音波検査などにより得た乳がんの診断画像を大量に集めて、機械学習させて、がんの有無を画像認識により自動検出したいとします。(乳がん検査は、肉眼では判定しづらいのが現状のようです)この場合、乳がん患者とそうでない人たち双方の診断画像が大量に必要です。

乳がんの発生確率は10万人のうち50人くらいだそうなので、裏を返すと、陽性の診断画像を50人分集める為には10万人にアクセスする必要があります。

とはいえ、陰性の9万9950人の診断結果をどこから取得するのでしょうか?乳がん検査はメタボ検診のように義務化されていないなので、任意で受診する人が10%いたとしても、残り9万人については、受診データ自体が存在しません。

機械学習や画像認識の技術がどれだけ進んでも、そのベースとなるインプット(ビッグデータ)を集められないので、結果が出せないわけです。

Nを確保できる可能性がある

そんな状況の中で、AppleがHealthKitをリリースしました。
iPhone, Apple Watchは医療機器ではないので、質問票に回答したり、脈を測ったり、軽い運動をさせて加速度センサーで測ってみたりと、できることには限りがあります。

しかし、利用者数が他の医療機器と比べて圧倒的に多いので、病院に行かない多数の健常者から、大量の診断データを収集確保できる可能性があります。(専門用語的に言うと、「Nを確保できる」)今まで、そんな事ができるデバイスは存在しませんでした。

そこまで理解して初めて、HealthKitはAppleがやるべきなのだと納得できました。